被爆三世の家族写真 撮影・展示プロジェクト > プロジェクトについて

写真家 堂畝紘子による非営利の撮影・展示プロジェクト。
命と絆のつながりを家族写真に記録しています。
[ 作品に寄せて ]
2015年1月、友人の言葉を足掛かりに「被爆三世の家族写真」の撮影を開始しました。この題材で何が出来 るのか、何か意味を見出せるのか、全く見当もつかないまま手探りで始めた活動でしたが、迷いながら撮影を 続ける中で、1枚の家族写真で命のつながりを可視化する意義と重みを実感するようになっていきました。 戦争、原爆を経験し、生きのびて命を繋いだおじいちゃん・おばあちゃんがいなければ、写真に写っている 全員が今ここには存在しないのだと初めて感じた時の気持ちは言葉ではあらわせません。同時に、消えた命が 繋ぐはずだった命をいくつも想像し、途方に暮れました。 (中略) 考える為には知らなければなりませんが、知る為にはきっかけが必要かもしれません。戦争も戦後も知らな い私たちは良くも悪くも考えずに生きてこられた世代であり、取捨選択の出来る自由な世代であり、次へと繋 ぐバトンを託された希望の世代で、アンカーなのかもしれません。家族だから聞けることがある反面、家族だ から聞けないこともあります。しかし、語られない理由を想像してみることもまた、私たちの世代だからこそ 出来ることではないかと感じています。 被爆三世が家族の存在を通して何を感じ、考え、今の時代を生きているのか。ありのままの姿とそれぞれの 命が「生きた証」を家族写真に記録しています。 これまでに、約100組の広島・長崎の被爆者家族を撮影してきました。被爆者から被爆二世、三世、そして 四世まで、幅広い世代の方々のご参加・ご協力をいただいています。しかし、撮影前後に亡くなる被爆者も少 なくはなく、被爆者高齢化の現実に焦りを感じずにはいられません。写真家として被写体に寄り添い、写真と 向き合い、繋いでいく方法を模索する中で、今日の展示の場があります。葛藤の連続ではありますが、この写 真展が「他人事」を「我が事」と認識するためのひとつの小さなきっかけになればと願っています。 広島・長崎に限らず、私たち世代のおじいちゃん・おばあちゃんは、戦争、戦後を生き抜かれた体験者です。 家族の体験した戦争とはどんなものだったのか。核兵器とは何なのか。平和とは――。 被爆三世の人も、そうでない人も、ご自身の視点でご覧いただけましたら幸いです。 堂畝紘子
